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痛みを抱える人に寄り添うお地蔵さんのおられる寺へ

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本堂の壁一面に並ぶ絵馬はおよそ1000枚。どんな痛みが抜けたか報告してきた人にしか渡さない絵馬で、20年以上前のものもあります。

本堂の壁一面に並ぶ絵馬はおよそ1000枚。どんな痛みが抜けたか報告してきた人にしか渡さない絵馬で、20年以上前のものもあります。

 日を追うごとに寒くなり、底冷えがつらい季節。節々が痛んでお悩みの方も少なくないのではないでしょうか。今回は、そんな痛みや苦しみから人々を救ってくださるという石像寺(しゃくぞうじ)のお地蔵様、通称「釘抜(くぎぬき)地蔵」を訪ねました。

 千本通りに面した門から境内に入ると、まず本堂の外壁一面にびっしり奉納された絵馬に圧倒されます。それぞれの絵馬には本物の八寸釘と釘抜きが貼り付けられ、何となく恐ろしげにも感じる風情。よく見ると、絵馬の上部に力強く“御礼”の文字がしたためられています。

 「この釘は、心や体に刺さった“痛み”のシンボル。それぞれが抱える痛みがなくなるよう釘抜地蔵様に祈り、その願いが叶った暁に、お礼として奉納する習わしなんですよ」と教えてくださるのは、ご住職の加藤廣驕iこうりゅう)さん。「絵馬を奉納していただく際には必ず、どんな痛みが抜けたかを報告していただいています」。奉納されている絵馬は、およそ1000枚。これら1枚1枚に、痛みから解放された方々の喜びと感謝が込められていると知ると、自然に手を合わせたくなります。

 石像寺は、1200年前に弘法大師によって創建されたお寺。大師が唐から持ち帰った石に自ら刻んだという本尊のお地蔵様が釘抜地蔵と呼ばれるようになった由緒は、16世紀、紀伊国屋道林(きのくにやどうりん)という商人の身に起きた奇跡に遡ります。道林は両手の痛みに耐えかねて、ここで願をかけたところ、満願の日にお地蔵様が夢に現れ、痛みの原因は前世で他人を呪詛するため作った人形の両手に釘を打ち込んだせいだと告げられました。お地蔵様が「私が救ってやろう」とおっしゃると、その手に2本の釘が握られ、痛みはたちどころに消えてしまったと-。

 道林がこの恩に報いようと100日間、日参したことから、釘抜地蔵様に痛みを抜いてもらいたいと願う人は、本堂を100回または数え年と同じ数だけ回って祈願をする習わしができました。今も境内では、老若男女さまざまな人がお参りに訪れ、お百度を踏む人の姿も絶えません。そこには、祈りの場であるお寺としての“生きた姿”があります。

 「お百度を踏む間は皆、お地蔵様の存在を身近に感じながら、心の内を打ち明けたり、生きてきた年月を1年ずつ振り返ったり、さまざまな形でお地蔵様と“対話”します。“話す”は“放す”に通じますから、悩みを吐き出すことで気持ちが楽になるんです」とご住職。「これからも人々が苦しみを“放し”、痛みの“釘”を抜くために手を合わせる場所として、変わることなく在り続けたいと思います」

毎月24日の縁日には、おつとめと法話のほか「地蔵しるこ」の接待や近隣医療機関スタッフの協力による血圧測定も行われます。

毎月24日の縁日には、おつとめと法話のほか「地蔵しるこ」の接待や近隣医療機関スタッフの協力による血圧測定も行われます。

お百度参りでは、数え年の分の竹棒を持って歩き、1周ごとに1本ずつ返却。周回を数えなくても大丈夫です。

お百度参りでは、数え年の分の竹棒を持って歩き、1周ごとに1本ずつ返却。周回を数えなくても大丈夫です。

 
本堂の裏手には、弘法大師が掘ったとされる井戸が。今でも水がこんこんと湧き出ています。

本堂の裏手には、弘法大師が掘ったとされる井戸が。今でも水がこんこんと湧き出ています。

 
年に一度、節分の参拝者にのみ授与される厄除けの姫だるま。一年間、家に置くと厄を引き受けてくれます。

年に一度、節分の参拝者にのみ授与される厄除けの姫だるま。一年間、家に置くと厄を引き受けてくれます。

 
 

石像寺(釘抜地蔵)住職 加藤廣驍ウん

石像寺(釘抜地蔵)住職 加藤廣驍ウん

20代で先代の後を継いだ加藤さんは、長年、参拝者からの悩み相談に応じる中で「専門的に心を学ぶ必要性を感じて」50歳を過ぎてから大学院に入り直し、70代で博士号を取得。臨床心理士として、お寺でカウンセリングも行っています。「もちろん最高のカウンセラーはお地蔵様ですが、どうしても生身の人間に話を聞いてもらいたい人もいる。そういう場合は、私の出番です」


Information
石像寺(釘抜地蔵)
京都市上京区千本通上立売上ル花車町503
TEL:075(414)2233

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