湯どうふの順正
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Kyoto Sumiyama Asakura Mokkou
木工に魅せられて山里に暮らし、作る、若き匠。
“朝倉さんデザインの椅子「トーチェア」

朝倉さんデザインの椅子「トーチェア」。背もたれに16 本立てられた細い木が微妙にしなり、体重を受け止める構造です。朝倉さんの椅子は基本的に釘やネジを使わず、木と木の組み合わせで強度を出す「ほぞ組み」という日本の伝統技法で作られます。

 宇治市炭山は、その名の通り昔から炭焼きが盛んだった山里。鴨長明(かものちょうめい)の『方丈記』には「これよりみねづづき、すみ山をこえ、かさとりをすぎ、或(あるい)は石間にまうで、或は石山ををがむ」という記述があります。雪に閉ざされた炭山には、かつてはいくつもの炭焼きの煙が上がっていたことでしょう。昭和40年頃には京都市内から多くの陶芸家が移り住み、京焼・清水焼の窯から煙が立ち上るようになりました。

 そんな山里でオーダーメイドのオリジナル家具を作っているのが「京都炭山朝倉木工」の朝倉亨さん。京都教育大学で木工を学んだ朝倉さんは、家具づくりの魅力に取りつかれ、卒業後、東京の人気家具メーカーに就職、8年後、独立し、大学時代の同級生の玲奈さんと結婚。制作に没頭できる環境を求めて、ここ炭山に移住しました。

 朝倉さんの作る家具の特徴は、材料となる木材の個性を生かすこと。椅子の座面やテーブルトップには、よく見ると無数の細かい筋が走っています。ヤスリを使わず、カンナで削って仕上げているのです。「紙やすりで擦ってしまうと、一見なめらかなように見えても細かい傷が残って、木の繊維がぼろぼろになるんです。刃物で切って仕上げると、傷ができず、ツヤっとした木の透明感が出ます」。

 仕上げに用いるのは、植物性のオイルをしみこませる「オイルフィニッシュ」という手法です。この手法で仕上げた家具は、使い込むほどに風合いを増すのだとか。「僕が作った家具は、依頼主がほぼ毎日、ほぼ一生使うもの。買った時が一番きれい、ではなくて、使い始めた時よりも、使い込んで時間が経ってからの方がきれいになっていく。そんなものが作りたいんです」。使う人の生活の中で成熟していく家具-そこには「出来上がったときの美しさ」だけでなく「年月が磨く美しさ」があります。朝倉さんの作品を買うことは、単なる消費ではなく、木でできたバトン≠託され、それを育てていくことを引き受けることなのかもしれません。

 工房の2階は朝倉さん夫婦と2人のお子さん(と猫2匹)が暮らす住居スペースで、朝倉木工のショールームも兼ねています。徒歩1分のところには、約30坪の第2ショールームも。

 「日々の暮らしの中で実際に使い込んだ家具を見ていただきたいので、気軽に見学予約を」と朝倉さん。ともに年を重ね、一生つきあっていける家具が欲しいという方は、一度訪ねてみてはいかがでしょうか。

座り心地を追求した「オーチェア」

座り心地を追求した「オーチェア」。背もたれや肘掛けのカーブが絶妙に体にフィットし、きれいな座姿勢で楽に座ることができます。

テーブルトップに走る無数の筋

テーブルトップに走る無数の筋。小さなカンナで丁寧に仕上げた面には、独特の光沢が生まれます。

工房も、その2階の住居兼ショールームも、朝倉さん自身が手掛けたセルフビルド

工房も、その2階の住居兼ショールームも、朝倉さん自身が手掛けたセルフビルド。木のぬくもりとやさしさに満ちた空間です。

Information
京都炭山朝倉木工
宇治市炭山堂ノ元23-3
TEL:0774(39)8095
(ショールーム見学は事前予約制)
 

京都炭山朝倉木工 朝倉 亨さん(左)妻の玲奈さん(中)スタッフの上薗史樹さん(右)

京都炭山朝倉木工 朝倉 亨さん(左)妻の玲奈さん(中)スタッフの上薗史樹さん(右)

家具の設計は棟梁である亨さんが行い、制作工程は各自が担当。分業せず、一つの家具を最後まで一人で仕上げるのだそうです。「ずっと心地よく使っていただける家具を作りたい」という思いで、真摯に木工に向き合っておられます。



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