湯どうふの順正
記す 炊く 建てる 旬の味わい 京のこばなし 平成とうふ百珍 拝観・見学一覧 絵ハガキ マップ バックナンバー ホーム
Shirine Carpenter Hasegawa
原料、製法、美しさを代々受け継ぐ匠の柏餅
原料、製法、美しさを代々受け継ぐ匠の柏餅

五月五日は端午の節句。男子の健やかな成長と立身出世を願うこの日には、縁起物として柏餅を味わいます。
 
柏の葉は、次の新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「家が絶えない」=「子孫繁栄」を象徴する縁起物とされてきました。その葉で包む餅は、病気や災いから身を守る象徴である兜(かぶと)の形が本来の姿。この形を作る際の手つきが柏手を打つ様子に似ていることも、柏餅が武運を祈願する端午の節句にふさわしいお菓子とされた理由の一つとされています。
 
「この兜の形は“貝包み”といって、昔ながらの手作りの証なんです。機械で作ると、ツルンと丸い形になりますから」と語ってくださるのは、京菓子笹屋昌園の当主、中西章斗さん。曾祖父が大正七年に創業した老舗の暖簾を受け継ぐ四代目です。小さい頃から京菓子の工房を身近に感じて育ち、中学生の頃には先代であるお父様から職人としての技とこだわりを教わったといいます。この、古式にのっとった柏餅づくりも、先代からの直伝の技の一つ。「父からは、同業者から見ても綺麗な商品を作らなあかん、とよう言われました。京菓子は何といっても見た目の綺麗さが命。それは柏餅も同じです」。確かに、柏の葉に包まれた兜の形の純白のお餅は、透き通るような艶があり、素朴ながらも何とも美しい姿をしています。
 
そんな柏餅の生地の材料は、うるち米粉と少々の餅粉、砂糖、お湯と、いたってシンプル。これらを合わせて蒸した後、杵でついて生地を作るのだそうです。「粉と砂糖、お湯の配合が食感の決め手になりますが、材料の状態は気候や湿度によって変わります。それを手で触った感触で確かめて、配合量を判断しています」と中西さん。「手仕事にこだわるというより、手の方が感覚が優れますし、効率は悪いかもしれませんけど、手で作ってこそ、ちゃんと人様に提供できるものを作れるような気がします」
 
その生地で包むあんは、漉しあんと味噌あんの二種。漉しあんは北海道産の小豆を何日もかけて銅鍋で炊き上げます。甘さを控え、小豆本来の風味が生きた滑らかな口当たりが魅力です。味噌あんは、京都の老舗の白味噌を白あんと合わせて練り上げたもの。まったりとしたコクと上質な甘みが口の中でさらりとほどけ、歯切れのよい生地との相性も絶妙です。 親が子を思う気持ちを、代々受け継がれた匠の心意気で大切に包んだ柏餅は、今年も新緑の季節にお目見えします。

季節の生菓子や銘菓など、目にも美しい京菓子の数々が並ぶ店内。柏餅は4月下旬から5月上旬のみ期間限定で販売されます。

季節の生菓子や銘菓など、目にも美しい京菓子の数々が並ぶ店内。柏餅は4月下旬から5月上旬のみ期間限定で販売されます。

一つひとつ丹念に、昔ながらの手仕事で作られる笹屋昌園の京菓子。

一つひとつ丹念に、昔ながらの手仕事で作られる笹屋昌園の京菓子。

うるち米粉、手亡豆、白味噌など、いずれも厳しく選び抜いた素材が使われています。

うるち米粉、手亡豆、白味噌など、いずれも厳しく選び抜いた素材が使われています。

Information
笹屋昌園
右京区谷口園町3-11
TEL:075(461)0338
 

京菓子 笹屋昌園 四代目 中西 章斗さん

京菓子 笹屋昌園 四代目 中西 章斗さん

「先代のやり方を受け継ぎつつ、今求められている味を提供できるよう、試行錯誤を続けています。昔ながらの製法を調べていくと、意外なヒントが見つかることも。そんな温故知新≠フ挑戦を続けていきたいですね。」



ページの先頭へ

ページの先頭へ