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神仏に捧げる伝統工芸『森本錺金具製作所』の技の世界
神仏に捧げる伝統工芸『森本錺金具製作所』の技の世界

最長老の職人さんは今年で74歳。熟練の技はまだまだ現役です。

秋は五穀豊穣を祈る祭りの季節。京都でも各地で、勇壮な掛け声とともに御神輿の巡行が行われます。そんな御神輿の屋根や胴などを彩る華麗な金具のことを錺(かざり)金具といい、古くから日本の社寺建築や法具、祭礼具などに欠かせない技として今に伝えられてきました。

五条西洞院の東南、細い通りの一角にある森本錺金具製作所は、その技を今に受け継ぐ工房。明治10年の創業以来、国宝・重要文化財を含む数々の文化財修復を手掛けてきました。現在、四代目として腕をふるう森本安之助さんは、文化庁の選定保存技術保持者にも認定されている"錺師"です。

三代目安之助さんの長男として生まれた森本さんは、幼い頃から身近なところで伝統技術に触れ、「いつかは自分が店を継ぐんだ」という自覚が自然と芽生えたのだそうです。学校を卒業後、いったん他県の金属加工会社に勤務した後、家業継承のため三代目に師事。一心に技術の修得に努めながら経験を積み、平成25年の伊勢神宮の式年遷宮では、太刀拵(こしら)えの御神宝と正殿(しょうでん)他の錺金具の製作という大仕事も成し遂げておられます。

小気味よい槌音が響く工房に案内していただくと、そこでは9人の職人さんたちが作業をされていました。錺金具製作の工程は、まず原寸図を描いて型紙を作り、地金となる銅板をなまして柔らかくし、型を転写。その地金を鏨(たがね)を使って切り抜いたり、精緻な彫刻を施したり、平らな地の部分に細かな魚々子(ななこ)文様を一面に打ち込んだりして立体的な造形に仕上げていきます。そして鑢(やすり)をかけ、鍍金(ときん)を施して完成。この鍍金、多くは専門業者に委託する気鍍金が用いられますが、伝統的建築物には昔ながらの水銀箔焼付鍍金を行うのだとか。

「錺金具製作はチームプレーです。たとえば神社の修復なら、社殿に施された膨大な数の金具の取り外しから始まって、洗浄し、歪みを修正し、金箔を施したものを元の場所に取り付けるまでの一連の工程を、全員総出でやります。どの工程が難しいか? それはもう、全てですよ。どの工程一つでもおろそかにすれば、全てが崩れてしまう。城壁と同じです」と森本さん。寸分の狂いも許されない仕事を語るその目に、真摯な光が宿ります。「錺金具は神仏に一番近い場所に捧げるものなので、ごまかしがききません。いつも正直に、丁寧に、妥協せずに向き合う。これからも、そうやって未来永劫この技を後世に伝えていきたいと思います」

JR西日本の依頼で製作した「TWILIGHT EXPRESS瑞風」の客室のためのスイッチプレート。(写真提供:JR西日本)

JR西日本の依頼で製作した「TWILIGHT EXPRESS瑞風」の客室のためのスイッチプレート(写真提供:JR西日本)。

 

森本錺金具製作所 森本 安之助さん

森本錺金具製作所 森本 安之助さん

「うちの工房では、28歳から74歳まで幅広い年齢の職人が頑張ってくれています。若者には若者の、ベテランにはベテランの得意分野があって、相乗効果で良いものができる。彼ら一人ひとりが、うちの宝です」

工房2階には錺金具の世界を知ることができる資料館を開設(観覧は要予約)
工房2階には錺金具の世界を知ることができる資料館を開設(観覧は要予約)

工房2階には錺金具の世界を知ることができる資料館を開設(観覧は要予約)


Information
森本錺金具製作所
下京区楊梅通西洞院東入八百屋町59
TEL:075(351)3772

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