湯どうふの順正
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-SANADAHIMO- 織
戦国武将の華麗な戦いを支えた強く美しい『真田紐』
指物師でもあった先代が製作した高機(たかばた)で真田紐を織る。

指物師でもあった先代が製作した高機(たかばた)で真田紐を織る。

戦国時代、変幻自在な戦いぶりで勇名を馳せた”真田の軍勢”。彼らの強さの秘密の一つに、その機動性に富んだ武具の存在がありました。ある時は刀の緒として結び、またある時は甲冑の手首や足首に巻いて武者たちの強くしなやかな動きを支えたものが、真田の名を冠して今に伝わる”真田紐”です。今回は、京都で400年以上にわたって真田紐を作り続ける真田紐師『江南』を訪ねました。

「真田紐は真田幸村が作り始めたと言われていますが、実はその歴史は、インド周辺から南伝仏教とともに日本に伝わった”サナール紐”に遡ります。組紐と違い、縦糸と横糸を織って作るため、とても丈夫で引っ張る力に強い。もともとは庶民が荷紐として使っていたものを、彼らを戦に徴用した武将が『これは良いものだ』と気づいて活用し始めたのでしょうね」。そう語るのは、15代目として伝統の技を守る和田伊三男さん。日々の製作のかたわら、大河ドラマ『真田丸』をはじめ、真田紐が登場する映像作品の時代考証や技術指導も手がけておられます。

刀で切りつけても切れないという真田紐。その話は本当なのでしょうか。

「本当です。だから忍者の鉢巻きにも、真田紐が使われていました。普通の織物の倍の本数の縦糸を、縒りをかけた横糸を封じ込めながら強く圧縮するため、非常に丈夫に作れるんです。用途によって自在に調整できる点も、武具として優れていたのでしょうね」。

乱世の戦場で活躍する一方、真田紐は千利休によって茶道にも取り入れられていきました。茶道具を収める桐箱に掛けられた端正な姿もまた、真田紐の一つの側面。「お茶の世界には、作家や流派に固有の色や柄の真田紐を決め、由緒や来歴を保証するという文化があります。これも元々は、武将の刀の緒が遺品になった際に持ち主を特定するために色柄を定めたことに由来するためのものだったようです」。この約束紐が、作品の真贋を鑑定する際の糸口にもなるとのこと。聞けば聞くほどに奥が深く、興味深い世界が広がっていきます。

江南さんのお店には、茶道具や呉服をはじめ、ファッションや料理など多彩な用途を求めてさまざまな人が集まります。時節柄、歴史ファンの来訪も多いのだとか。「お客さん同士で会話が始まって、まるでサロンのような様相に。そこで時おり新たなコラボ商品が生まれたりして、面白いですよ」。出会い、織り成し、結ばれる発想と発想。それこそが、真田紐という文化の神髄なのかもしれません。

 

京真田紐師 江南 和田 伊三男さん

京真田紐師 江南 和田 伊三男さん

高校時代にアメリカへ留学し、ボストン美術館付属美術大学で美術の各分野を修めたのち家業を継いだという経歴の持ち主。近年は機械織りも増えてきましたが、今も注文に応じて草木染めで糸を染める手織りの真田紐を奥さまとともに作り続けておられます。

仏の姿を私たちに見える形にお迎えする仏師、江里康慧

茶道具を収める桐箱「利休箱」には、真田紐を掛けるのが決まり。作家や流派が固有の色柄を定めた「約束紐」は、いわば保証書のようなもの。


Information
京真田紐師 江南
京都市下京区猪熊通り高辻下ル367
TEL:075(803)6433

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