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SANSAN-DO 味わう
颯爽とした甘味鞍馬杉々堂の「山椒餅」
うっすらと、中のあんこの色合いがのぞく山椒餅。お昼を過ぎれば、完売してしまうことも。

うっすらと、中のあんこの色合いがのぞく山椒餅。お昼を過ぎれば、完売してしまうことも。

 京都で秋の夜空を焦がす祭と言えば鞍馬の火祭です。京都三大奇祭に数えられるこの祭へ足を運ばれる方に、ぜひおすすめしたい鞍馬ならではのお菓子があります。

 大小数百本の松明(たいまつ)が火の粉を散らしながら、溢れる人だかりを抜け、向かう先は鞍馬寺の山門。そのすぐ前にお店を構える杉々堂(さんさんどう)は、山深い鞍馬の名産である山椒を使った名物「山椒餅」で名高い“おまん屋”さんです。

 「明治生まれの祖父が、鞍馬の山里ならではのお菓子として考案したのが山椒餅です。店名も、鞍馬山から空に向かって真っ直ぐに伸びる常緑樹の杉からとっています」。そうお話しいただいたのは柳野久代さん。二代目であるお父さま、清水昭雄さんとともに店を切り盛りされています。

 杉々堂の山椒餅は、やわらかなお餅に山椒の粉を練り込んだ皮で、ほんのり甘い餡を包み込んだ逸品です。ふわりと弾力を感じさせる食感の後に追いかけてくる、ぴりりと香り高い山椒の風味が、粗めに仕上げられた小豆餡の甘さを引き立ててくれます。お昼過ぎには、売り切れていることもしばしば。

 「父と二人だけで拵えているので、山椒餅は平日は30個ほど、週末でも50個ほどが限界なんです」。

 作業場を覗かせていただいて、納得。おくどさんで餅米を蒸し上げ、開店以来使い続けている石臼を使って手で餅を搗き、うっすらと中の餡の色が感じられる薄さで包み込まれていきます。もちろん、生み出されるのは山椒餅だけではありません。昔ながらの蒸しきんつばやよもぎ餅も、同様の手作業で作られます。

 「代が変わっても変わらない作り方で、同じ道具で今に至ります。できることを、できる分だけ。こだわりのやわらかなお餅の食感が失われないためにも、当日中に召し上がっていただきたいですから」と久代さん。

 祭り当日は、早めに店仕舞いされるとのこと。少し早めに鞍馬に足を運んで、山椒餅の絶妙の味わいをお楽しみいただくのも、鞍馬の楽しみのひとつです。

店先に用意されたショーケース。名物の山椒餅をはじめ、濃厚な味わいの蓬餅(よもぎもち)、昔ながらの製法のきんつばなどが並びます。 店先に用意されたショーケース。名物の山椒餅をはじめ、濃厚な味わいの蓬餅(よもぎもち)、昔ながらの製法のきんつばなどが並びます。
杉々堂
Information
杉々堂

京都市左京区鞍馬本町242

TEL:075(741)2155
 

杉々堂柳野久代さん

杉々堂柳野久代さん

「今年の春から、店内で腰をかけてごゆっくりとお召し上がりいただけるスペースを用意しました。鞍馬寺にお越しの際は、ぜひ足休めに」。

干支面の巳。裏面は明治時代の書物を重ねて形成します。柔らかな印象を醸すお多福や稚児面などには、かな文字の古書を使用するというこだわりも。


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