
着慣れない晴れ着に身をつつみ、家族や親戚とともに神社へお参り。
そんな七五三の記憶をひも解けば、素敵な衣装をまとった喜びよりも、甘くて長い千歳飴に吸い付いた思い出が甦る方も多いのではないでしょうか。
無事に大きく育つことが当たり前ではなかった時代、「七つまでは神の内」といわれ、子どもは七歳まで神さまにお任せするものと考えられていました。三歳、五歳、七歳と我が子の成長を愛おしむように祝い、千歳までの長寿を願う。甘く懐かしい心の中の千歳飴がぐるぐるとねじられたものだったら、それは今も昔ながらの飴作りを大切に受け継いでいる『京あめ処豊松堂』の飴だったかもしれません。
「今も昔も親が子の成長を願う気持ちに変わりはありませんよね。うちもずっと同じ想いで、水飴のやさしい味わいを大切にした千歳飴をつくらせてもらってます」。
そう語るのは四代目の田中昭次さん。豊松堂の千歳飴は“ねじり”がかかった形状なのが特長。銅鍋直火炊きで、代々京都の神社を始め、全国にも千歳飴を納めている京のあめ処です。
「最近は白い部分をミルク味にするのが主流のようですが、うちでは祖父や父に教わった通りのまま。飴を丹念に練り込むことで空気をたっぷり含ませて柔らかな白色を出します」と田中さん。水飴に親しんだ世代ならお分かりの通り、白くなるまで練り上げると、なんとも穏やかな味わいに。
「三角形に飴を伸ばし、ぐるぐるっとねじると、できあがり」。
あまりに容易くおっしゃるその工程に、他には真似のできない技が隠れている様子。伺えば、伸ばされた飴の三辺が同じ長さに仕上がっているため、こんなに均等で紅白のラインが際立つ美しいねじりが作れるのだそう。
11月15日、七五三の千歳飴がねじれていたら、それは京の千歳飴。その子が大きく育ち、子どもの健やかな成長を願うようになったとき、ご両親への感謝とともに、直火ならではの香ばしさとやさしい甘みを懐かしく思い出すことでしょう。 |
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飴の味わいだけでなく、その人柄まで柔らかなご主人。「全国からインターネットでのご注文も承っておりますが、全て手作業の飴屋ですので、お日にちをいただく場合がございます。ご理解いただければ・・・」とのことでした。
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