ふんわりと白い団子に、香ばしい焦げめがついて、とろ〜り甘いタレが付いた、みたらし団子。子どものころ、シャツやワンピースにタレを垂らして、叱られた記憶のある方もきっと多いはず。ところで、みたらし団子が、立派な“季語”であることをご存知でしょうか?
花見や紅葉の季節にも、また、冬の寒い季節にも美味しいのですが、俳句の世界では「夏」の季語です。そもそもは、夏の土用に下鴨神社で行なわれてきた「御手洗(みたらし)祭」の際に、神撰(しんせん)[お供え]とされたのが、みたらし団子の由来です。今も、下鴨神社のすぐ傍らにある加茂みたらし茶屋の前を通れば、お店のなかから香ばしい匂いが漂ってきます。
ついつい匂いにつられて訪れると、みたらし団子のように“色白”の女将さん、中村和子さんの声が聞こえてきました。
「今では、日本中どこにもあるように思われていますが、みたらし団子は、下鴨さんの境内で売られてたのが本家本元です。下鴨さんの御手洗池に、ブクブクっと湧いてくる泡をかたどったとも、夏越しのお祭りに使われる人形(ひとがた)をかたどったものともいわれています。串に通してある団子の数は五つで、人間の五体をあらわしてあります。夏の暑い季節、お腹を冷さないようにと工夫されたお団子なんですよ」。
夏、下鴨神社の前のこの茶店であつあつを食べるのが、本格的なみたらし団子の食べ方だったんですねぇ〜。とりわけ、お店が熱気にあふれるのが七月の土用のころ、みたらし祭の当日です。
「お祭りの日は、もぉ体力勝負ですよ。一部機械に任せられるところもあるのですが、ふっくらとしたお団子を作るには、大半は人力でないとダメなんです。クーラーを効かせてても大変な熱気になります」。
時代が移り変わっても、人の手によって作り出されるみたらし団子。おもに黒砂糖を用いたタレの味も、日によって微妙な違いがあるとか。お祭の日には何万本もつくられるそうです。
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「黒砂糖が高価だった昔は、お醤油でタレを作っていたそうなんですよ」。その口伝を再現してか、お店には生醤油に山椒を効かせた裏メニューも、時おり登場します。 |